最近の原油価格高騰の影響のため、新聞記事でも特集記事が目に付く。
今日は、朝日新聞と毎日新聞で原油の埋蔵量と生産量について特集がされていた。毎日新聞の記事をここでは紹介。
原油高騰:枯渇?無限? 年々増える埋蔵量中国の経済発展、イラク情勢の泥沼化、ハリケーンの米本土直撃……。世界の出来事が原油価格に敏感に跳ね返り、高値基調が続いている。一方で、石油の埋蔵量自体は年々増えているそうだ。どうしてだろうか。【中村牧生】
◇価格上昇「採算ベース」増
第1次石油ショックが起きた73年。「石油はあと30年で枯渇する」とも予測された。しかし、それから30年余り。すでに枯渇していてもおかしくないのだが、「採掘可能(可採)年数は40年以上」と逆に伸びている。
石油メジャーの英国石油(BP)によると、統計を取り始めた1943年の埋蔵量は510億バレルで可採年数は22.2年だった。75年には6660億バレル、33.1年、04年には1兆1890億バレル、40.6年に達した。約60年間で埋蔵量は約23倍、可採年数も2倍近くに伸びた。
なぜこんなことが起きたのか。からくりは埋蔵量という言葉にある。
埋蔵量は正確には「可採埋蔵量」のことだ。資源として存在が確認され、現在の技術で採掘して経済的に成り立つ油田のことを指す。このため、石油の市場価格が上がって採算のとれる油田が増えたりすると、埋蔵量も増えることになる。
石油会社で作る「石油鉱業連盟」企画調査部の中本亮一主査は「石油価格の高騰で、アフリカ西海岸やブラジル沿岸の大西洋の海底油田が開発できるようになった。カスピ海で新たな油田が発見されたことも大きい」と話す。
だから、現時点の可採年数が過ぎた40~50年後についても、石油業界は「枯渇するという根拠は全くない」と否定する。だが、複数の地質学者は「近いうちに生産量がピークを打つ」とみている。新発見の油田が徐々に減っているからだ。
石油生産は左右対称の釣り鐘型の曲線を描いて増減すると考えられている。65~70年をピークに減り始めた米国の石油生産のデータから、米地質学者のハバート博士が導き出した経験的モデルだ。地球上にある石油の半分が採掘された時点で、生産量は急激に減り始めると予測されている。
米地質調査所(USGS)は、未発見の油田を含めた究極可採埋蔵量を3兆3450億バレルと推定する。世界中の研究者が予測する中で最も楽観的な数値だが、それでも生産量は20~25年後にピークに達し、そこから減少を始める見通しだ。
お金を出せば石油が買える時代はしばらく続くが、中東問題に詳しい東北文化学園大の小山茂樹教授は「石油価格高騰の根底には、石油生産のピークが近づいている事実がある」と指摘する。(後略)毎日新聞 2005年11月4日 13時43分
原油生産量のピークが近いというのは、アメリカのハバート博士が、1950年代にすでにモデル(Hubbert曲線)を作り、1970年代に米国の原油生産量が減少することを予測し、実際に1970年代に入ってからは、減少を始めている。この後にキャンベル氏らが世界の油井にこのモデルを当てはめて原油生産量の予測を行っている。安い原油が手に入りにくい時代に既に突入しているのかも知れない。
若干専門的な話になると、世界の累積原油生産量は、ロジスティック曲線のカーブに沿っておおよそ増加し、その曲線を時間で微分することによってこのHubbert曲線を得ることができる。あくまでも経験則で出される曲線ではあるが、最近の原油生産量の推移や価格を考えてみても注目すべき曲線である。この議論については、Hubbertの論文に最初に出ている。
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