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Saturday, September 27, 2003

【ジャイアンツの伝統?】

■原監督突然の辞任劇は「伝統の巨人軍」ブランドの凋落を表す

ちなみに私は子供の頃、巨人軍が大好きだった。

その頃はまだ「東京ドーム」ではなく、「後楽園球場」だったし、ベンチには現役の長嶋と王が居てON砲と呼ばれていた。いわゆる「巨人、大鵬、卵焼き」世代、といえば年齢が判ってしまうが・・・。そんな私は、長嶋が退任して以来、このところジャイアンツには大して興味はなく、なんとなくニュースを見ている程度だったのだが、今年のジャイアンツの戦いぶりにはシーズン途中から漠然とした違和感というか、寂寞とした印象を持っていた。

そもそもの始まりは松井の大リーグ移籍だった。ジャイアンツといえば、日本のプロ野球の開祖といってもよい元祖家元的存在で、なんせチーム名に「軍」が付いているぐらいだから、正に泣く子も黙る威厳と伝統に彩られたチームだったのだが、それだけにヤンチャ坊主がそのまま大きく成ったような選手が多い野球界において、業界トップとしての自負と自信に満ちたブランドであり、そこに帰属するものは「球界の頂点」に居るプライドを精神的にも物理的にも感じることが出来る、そんな存在だったのだ。

つまるところ、日本のプロ野球界に属する者は、多かれ少なかれ「ほんとはジャイアンツに入りたい。」気持ちがあったし、そしてそれが或る種の究極のゴールでもあったのだ。

「巨人軍選手たるもの紳士たれ。」という標語は、そうした背景から醸し出されたものだったのだ。

そんなジャイアンツの、しかもトップ・プレイヤーだった松井選手がFA権を行使してNYヤンキーズに移籍が決まった瞬間に、この「究極のゴール」としてのチーム・ブランドは、たかだか「ローカルな日本国内リーグの一チームに過ぎない」というポジションに下落してしまった。

聞くところによると、原監督は今シーズンが始まる前に、ジャイアンツの選手達に対して「松井箝口令」なるものを発令したと云う・・・。ようするに「メディアに松井のことを聞かれても語るな。」ということだが、ただでさえ元々リーグの頂点に立っていた現役選手が、結局はその地位に満足すること無く、そのさらに上のクラス=大リーグを目指し、更に移籍先での歓待ぶりや、その後に見せた活躍ぶりは連日新聞やTVのトップニュース扱いに成った訳で、瞬く間に”松井”の名はローカル・ブランドからグローバル(アメリカン?)ブランド”MATSUI"に変ぼうしたのだ。この松井の姿は、おそらく昨年までベンチを共にしていた選手達にとってみれば羨望の的であったに違いない。

今までも野茂や石井、イチローなどなど、各々日本野球界で一定以上の評価と実績を持った選手が大リーグに移籍して活躍していたし、それに「そこそこ」の選手と思われた新庄までもが予想外の活躍を見せるように成り、日本のプロ野球のレベルの高さは既に実証されていた。

しかし、彼等はいずれも日本球界のシンボルである巨人軍に属していた訳ではなく、そういう意味では相変わらず日本球界のトップはジャイアンツ、という事実に変わりはなかったのだ。

ところが、そのジャイアンツの看板スターが大リーグに、しかも正真正銘アメリカのベースボール界における輝かしい伝統の保持者であるヤンキーズへ移籍し、そしてその松井が事あるごとに「ここに居られる事は光栄です。」だの「尊敬する選手の仲間に成れて本当に嬉しいです。」だの、なんだか「おのぼりさん状態」の発言をすればするほど、昨年までのチームメート達は思わず寂しく成ってしまったに違いない。ようするに自分達は「その程度」のチームだということを、間接的に云われているのと同じだから・・・。

しかも、表向きは松井に関して「やっぱり彼は素晴らしい」とか「羨ましい」とか「実は妬ましい」などという気持ちは、おくびにも出してはいけないのだ。去年は日本一に成ったし、それなりにギャラも高いし、外を歩けばそこそこチヤホヤしてくれるし、やっぱり「栄光のジャイアンツ」であることに自然と慣れ親しんでいた彼等は、多分松井の活躍を見るにつけ、そんな鬱屈した気持ちを抱いていたに違いない。

「上には上がある」事を否応なく認識してしまった彼等には、もう既に業界トップとしてのプライドを保持する意味合いも動機も無く、日本プロ野球界というローカルなリーグでシコシコと仕事をこなしていくのがやっとだったのだろう。今年のジャイアンツには、そんなダウンな雰囲気が漂っていた。

そんなチームを率いていた原監督は、これまた栄光のジャイアンツにとって「生え抜きのエリート」であり、監督に成るべくして成った人物だ。

昨年も、就任早々日本一を決めてしまい、きっと彼自身も内心「ヤッパリ俺って凄い」と思った事だろう。しかし、昨年の成績は何と云ってもそれまで長嶋監督が築き上げて来た資産を相続したに過ぎず、原自身の実績と呼ぶ事はとても出来るものではなかった。

そんな彼が、いまだに引退しない老害的存在の「ナベツネ爺」から、今年の戦績の腑甲斐無さをなじられ叱咤された時(と伝えられているのが本当だとすると)、原の中ではもはや守るべき矜持は己のプライドだけに成ってしまったとしても、彼を責める事は出来ないだろう。

巨大な時代錯誤と権威主義の固まりで、あたかも天皇のごとき振る舞いを恥じる事すらないこのクソジジイ状態のナベツネ氏は、原のプライドを粉砕する事で結果的には「伝統と栄光のジャイアンツ」というブランド価値を見事に破壊してしまったのだ。

いずれにしても、ブランド価値を失ったジャイアンツは来シーズン以降、試合中継の視聴率低迷 とライセンス商品の売上減益という事態を避けることは出来ないだろう。いや、本当のファンだったら、そういう形でフロントに対する意思表示をしても良いのではないか?

この業界においては、チーム運営が企業活動である以上、オーナーと監督は上司と部下の関係から逃れる事が出来ないわけだが、正にオーナー(フロント)と監督の人間関係を構造改革する事によって予想を遥かに超える変貌を遂げた阪神タイガースに比べると、今回の原辞任劇はあまりに好対照であり、常勝軍団としての読売巨人軍の凋落を感じさせて余りある出来事として長く記憶に留めることに成るだろう。

野中 英紀

Posted at 02:59 PM

September 27, 2003 in Sports | Permalink

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