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Friday, March 26, 2004

【告発の行方 R.クラーク氏の場合】

■3月23日と24日の二日間に渡って行われた「9.11委員会」の公聴会はまるで戦場のようだった。もちろん、そこで飛び交っていたのは言葉の銃弾だ。

9.11の犠牲者の遺族達の働きかけで、ホワイトハウスの反対にも関わらず開催されることになったこの公聴会。9.11が何故起きたのか?何故防ぐことが出来なかったのか?その責任は誰にあるのか?世界中の人々が抱いている疑問を正面から解明しようというこの委員会の焦点は、いうまでもなく、タイミング良く公聴会の前日に出版された「Against All Enemies」の著者、リチャード・クラーク前大統領補佐官の証言だ。

本の出版のタイミングは正に絶妙としか言いようがない。公聴会に先立って行われたクラーク氏のインタビューが全米のメディアのヘッドラインを飾り、彼が何を証言するのか全米が(そして世界中が)注目していた。

この模様はCNNで生中継されていたので僕も眠い目をこすりながらこの二日間のバトルを徹夜で“観戦”した(お陰で目の下にクマが・・・)。

一日目の公聴会に召喚されたのは、クリントン政権とブッシュ現政権の中心メンバー。

WITNESSES:
Former Secretary of State Madeleine Albright
Secretary of State Colin Powell
Deputy Secretary of State Richard Armitage
Former Secretary of Defense William Cohen
Secretary of Defense Donald Rumsfeld
Deputy Secretary of Defense Paul Wolfowitz
Chairman, Joint Chiefs of Staff General Richard Myers

オルブライト前国務長官(クリントン)、パウエル国務長官、アーミテージ国務副長官(彼は公聴会での証言を拒否したライスの代理人という位置付け)、コーヘン前国防長官、ラムズフェスド国防長官、ウォルフォウィッツ国防副長官、メイヤーズ主席補佐官。

23日の公聴会の模様の全文はWashington Postのサイトにアップされている。ものすごいボリュームなのでここでは割愛するけど、興味のある方はどうぞ。

この日の公聴会では、委員の多くがクラーク氏の本を引用し、その内容に基づいて証人に質問をしていたが、当然のことながら出版されたばかりの本を全て読んでいる人は皆無で、本の一部が引用されるたびに「私はまだその部分を読んでいないから分からない。」とか、「その部分がどのような文脈で書かれたものか分からないので答えられない。」というやりとりになっていた。これにはまるで二日目に登場するクラーク氏が、既にそこに居るのと同じような効果があったような気がする。

さて初日のやりとりで際立っていたのは、クリントン政権がオサマ・ビン・ラディンとアルカイダに対して極めて高い関心を持ち、その勢力をつぶす為にアフガニスタンに対する経済制裁の発動など、出来うる限りの政策をとっていた、という部分(オルブライトなど)。クリントン政権下のホワイトハウスでは、ほぼ連日アルカイダ対策のミーティングが行われていたという。

アフガニスタン政府(タリバン)に対して、潜伏しているビンラディンを引き渡すように要求したり、ゲリラの訓練基地とされる場所をスカッド・ミサイルで攻撃したり(当時これはクリントンとモニカ・ルインスキーのスキャンダルをもみ消すための煙幕だと揶揄された)、国際的なアルカイダの資金ネットワークを絶とうとしたり、またクリントンは実際にオサマの暗殺を承認し、CIAに実行を命じたという。ちなみに米国政府は表向きこうした暗殺行為を禁じている。

しかしこれらはいずれも成功しなかったわけだが、クリントン政権時代にはアルカイダによるテロの危機を最重要課題として位置付けていたということが様々な記録と証言によって明らかされた。

一方で、クリントン政権からブッシュ政権に移行してからは、アルカイダのテロ情報に対する危機意識は消え去り、政府高官によるテロ対策会議も行われず、アルカイダによるテロ情報は報告されていたものの、ブッシュ政権はこれを重要だとは思っていたが緊急性のあるものと見なしていなかったという部分が追求の的になった。

24日の公聴会には、いよいよ注目のリチャード・クラーク氏が証言に立った。この日の議事録は同じくWashington Postにアップされている。登場した証言者は以下のとおり。

WITNESSES:
GEORGE TENET, DIRECTOR, CENTRAL INTELLIGENCE AGENCY
JAMES PAVITT, DEPUTY DIRECTOR, CENTRAL INTELLIGENCE AGENCY
SAMUEL BERGER, FORMER NATIONAL SECURITY ADVISER
RICHARD CLARKE, FORMER NATIONAL COORDINATOR FOR COUNTERTERRORISM FOR NATIONAL SECURITY COUNCIL
RICHARD ARMITAGE, U.S. DEPUTY SECRETARY OF STATE

クラーク氏は証言の冒頭、公聴会の傍聴席を埋めた9.11の遺族とテレビを通じてこの模様を観ている関係者に対して、“政府関係者としては初めて”公式にテロを防げなかった自らの非を認め謝罪した。

I welcome these hearings because of the opportunity that they provide to the American people to better understand why the tragedy of 9/11 happened and what we must do to prevent a reoccurance.

I also welcome the hearings because it is finally a forum where I can apologize to the loved ones of the victims of 9/11.

To them who are here in the room, to those who are watching on television, your government failed you, those entrusted with protecting you failed you and I failed you. We tried hard, but that doesn't matter because we failed.

And for that failure, I would ask -- once all the facts are out -- for your understanding and for your forgiveness.

この発言はある意味で衝撃的だ。なんせ今まで政府関係者が9.11に関して謝罪するということは一切無かったわけで、このクラーク氏が約3時間半におよぶ証言を終わって退席する際には、傍聴席の遺族関係者から拍手が送られるという場面もあった。

クラーク氏の論点はブッシュ政権にとって極めて厳しい内容だ。クリントン政権時には頻繁に行われていた上級レベルでのテロ対策会議が、ブッシュ政権に移行してからは全く行われなくなった上に、諜報機関の活動に対する疑念から全体的な見直しが行われることになり、結果的に時々刻々と入ってくるテロ情報は全て担当者レベルで滞留してしまい、ホワイトハウスで真剣に検討されること無く9.11を迎えてしまったからだ。

そしてその当事者として名指しされているのが、国家安全保障問題担当のコンドリーザ・ライス大統領補佐官だ。彼女はクラーク氏の批判に対して早速猛反発していたが、結局事前聞き取り調査には応じたものの、公聴会での証言は拒否している。

クラーク氏は「ライス補佐官がきちんと仕事をしていればテロは防げたはず。」とまで云っている。

さらに、クラーク氏は「イラク侵攻はそもそも不必要であり、結果的には米国のテロ対策を弱体化させる結果に成った。」と評価する。その理由は「アルカイダ関係者の拡散と、それ以外のイスラム原理主義者や過激派に反撃の口実を与え、イラク戦に莫大な人員と費用を投入することで本土の安全保証体制が弱体化された。」からだという。

こうしたクラーク氏の指摘に対して、ホワイトハウスは総がかりで反論し、クラーク氏の信用を貶めるような広報活動を政府高官達が自らが行っている。大統領選に与える影響を相当深刻に懸念しているのは明らか。

しかし、メディアも含めて周辺では「クラーク氏の資質に関する攻撃は問題の本質から外れている。むしろ重要なのはアメリカのテロに対する危機管理体制が何故機能しなかったのか?という疑問に正面から応えることだ。」とホワイトハウス側の対応を批判する論調が多い。

公聴会翌日にCNNのラリー・キング・ライブに出演したクラーク氏は、公聴会に出てこなかったライス補佐官に対して更に痛烈な批判を繰り広げていた。今後ホワイトハウスとクラーク氏とのバトルは大統領選をにらんでヒートアップすることは確実。

それにしても、こういう公聴会を通じて政府が何をやってきて、何をやってこなかったのか検証する作業を、与野党が共同で公開の場で行うというアメリカ議会のあり方は、我が国の現状と比べると正直なところ羨ましくもある。

March 26, 2004 in Media, Politics | Permalink

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