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Wednesday, May 10, 2006

【“Dark Side of the Moon”が再演されるらしい】

■でも演奏するのはPink Floydじゃなくてロジャー・ウォータズ

CNN.COMの記事によると、ロジャー・ウォーターズは今年の秋に行う18箇所の北米ツアーで、『Dark Side of the Moon』をフルサイズで再演するそうだ。

Former Pink Floyd frontman Roger Waters, who will perform the entire "Dark Side of the Moon" album on his 18-city North American solo tour this fall, talked with Billboard about the album.

CoverdarkPink FloydといえばDark Side of the Moon。Dark Side of the MonnといえばPink Floydといっても良い、彼らの代表作にして最高傑作。

1973年3月17日の初登場以来、1988年の7月までBillboardのTop200に連続736週チャートイン。その後再度チャートインした分と、Top Pop Catalog Album Chartでの759週間を合計すると、なんと1500週間もチャートに居座り続けたという驚異的な記録を持つまさにモンスター・アルバム。

単にピンクフロイドの代表作というだけでなく、1970年代の音楽シーンやポップ・カルチャーにおける金字塔といっても良いマイルストーン的作品だ。

当時まだ中学生だった僕は、初めてレコードに針を落とした瞬間から激しくはまってしまい、それからというもの、家人の迷惑も顧みず、連日大音響で何度も何度も繰り返し聴いた覚えがある。

今でも2年に一度ぐらいの感じで、時々思い出したように再生するけれど、このアルバムは聴き流すということが不可能な作品なので、どうしても時と場所とシチュエーションを選んでしまう。

そのDark Sideをロジャー・ウォーターズがソロ・ツアーで再演するという話なんだけど、ちょっと複雑な気分。

去年の夏に行われたLIVE 8で、実現不可能といわれたリユニオンを果たしたピンクフロイド、というかギルモアとウォーターズの二人。しかし長年に渡る確執を超えて実現した再会はやっぱり大方の予想通りワンショットだったようだ。

22年ぶりのソロアルバム『ON AN ISLAND』をリリースしたばかりのギルモアは、最近のインタビューでフロイドを過去のものとして再結成どころか今後の活動も完全に否定しているけれど、彼はこのニュースを聞いてどう思うのだろう?

フロイドの詩における哲学的・思想的な世界はウォータズが、そして音楽的な世界は主にギルモアが担っていたというのが通説になっていて、その後の経緯や作品を見ると、それは確かにそうなのだろうと思う。

でも二人ともそれぞれに「俺様こそがピンクフロイドだ。」と思っているのは間違いない。

実際、ギルモアは最初にLIVE 8 への出演要請があった際には、ソロアルバムのレコーディング中ということもあって断ったらしい。結局はウォーターズから直接電話で説得されて出演に至ったわけだけれど、彼がウォーターズとの再会に積極的だったとはとても思えない。(たぶん、本当に嫌いなんだと思う。)

ウォーターズが脱退して以来、フロイドを存続させてきたギルモアは現ピンクフロイドのリーダーという立場で、ライブではウォーターズ抜きでDark Side~やWish You Were Hereの曲を演奏してきた。

そういう意味では、これはウォーターズによるギルモアへのリベンジ、ないしは回答ということなのだろうか?

CNNの記事自体のネタ元はBillboardによるウォーターズのインタビューで、CNNでは一部割愛されているので両方を読み合わせる必要があるけれど、興味深いのはこの再演のキッカケだ。

なんとそれは、今年の7月15日にフランスで開催されるFormula 1のプレイベントとして行われるのだ。

どうやら大会の関係者がイベントのアイデアとして「ピンクフロイドにダーク・サイド・オブ・ザ・ムーンを演ってもらったりして?」と提案してみたところ、「いくらなんでもフロイドは受けてくれるわけないじゃん!でも、もしかしたらロジャー・ウォータズなら・・・?」ということで、巡り巡ってオファーを受けたウォータズは「それって案外良いアイデアかも!」ということになり、実現に至ったんだそうだ。

Q: You’ve said that you will play "Dark Side of the Moon" in its entirety on your upcoming tour. How did that come about?

A: It was a request from Formula I in France. They wanted a big event to go on July 14, which is the day before the French Grand Prix at Magny-Cours, it’s about 100 kilometers south of Paris, and somebody in the organization rather fancifully suggested Pink Floyd playing "Dark Side of the Moon," and somebody else rather fancifully approached various people who said, "Are you f***ing insane? It’s not going to happen."

And they then said, "What about Roger Waters, would he do it?" So they asked me and I was rather taken aback, I have to say. I thought about it and I thought, "Hey why not? What a cool idea." And the more I’ve worked on it the more the idea has grown on me and we’re working very hard. And I’m going downtown as we speak to work on visuals for "Dark Side of the Moon" and the rest of the show. I‘ve got a great band together and I have every hope that we will do the work justice.

このインタビューを読むと、実はウォーターズがギルモアとは対照的にLIVE 8でのリユニオンを心から楽しんだらしいことがわかる。

Q: You looked like you were having a ball onstage at Live 8 last summer.

A: I was, trust me. It was very cool, I really loved every minute of it.

Q: So do you think that was the last time you’ll get a chance to do that?

A: As I’m sure you’ve read in the press he’s been doing, Dave is very adamant that that’s it, he’s done, he’s doing his solo stuff, Pink Floyd is behind him and blah-di-blah-di-blah.

Never say never, you know? I thought it was fun. It was more than fun. And it was so interesting to hear what it actually sounds like with Rick [Wright] and Nick [Mason] and Dave and I all playing together. Because there is a very specific kind of vibe and sound to it, which I hold in great regard and which brought back lots of memories. It was terrific, I really loved it.

F 1のイベントというキッカケがあったにせよ、LIVE 8での体験が無ければオファー受けなかったんじゃないかな?

ウォーターズは、既に舞台装置のデザインについても、オリジナル・ジャケットにあったピラミッドをモチーフにすることを決めているらしい。個人的には彼がTHE WALLなんかでやってた演劇的要素はそんなに好きじゃないけれど、きっと彼なりにコダワリの演出をするに違いない。

フランスまで観に行くのはちょっと無理だけど、でもやっぱり観てみたい。もう、このツアーのどのステージでも構わないから是非ともDVDにしていただきたいと思います。

May 10, 2006 in Music | Permalink

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Comments

こんにちは。前回お知らせした『アニマルズ』のいじめ解釈のウェブサイト、25ページにもなってオープンしました。待っていたロジャー・ウォーターズの承諾も得ました。でもJASRACが一切の歌詞の掲載を許可しない(金銭の問題ではなく)ということで、替え歌なしのオープンです。業界の天皇と言われるあのピンク・フロイドが承諾したってことで、ニュース性はありませんか? 
●井〆村の《いじめ農場物語》
http://www.geocities.jp/izimefarm/index.html

Posted by: IzimeFarm at May 2, 2007 1:47:42 AM

レスをありがとうございました。

ほっとしました。「豚=資本家」なんてレスされましたら私は返事を書かなかったでしょう。「Pigs」は「いわゆる横暴な支配者を表すキャラクター」で正しいです。私のいじめ解釈と観点が異なるとおっしゃいますが、私は全然ずれていないと思いますよ。比喩は当てはめるものによって異なった展開がされるはずで、ウォーターズは覚悟のはずです。

日本の雑誌やウェブのほとんどが「豚=資本家、犬=インテリ、羊=小市民の現代社会批判」と書かれてますが、洋書の翻訳本4冊にはどこにもそんな定義は書かれていません。まずその日本だけの定説を私は否定したいです。
「世界最強の軍事力をもってアメリカ的な価値観を他国に押し付ける今のアメリカ」──これ、最近ウォーターズもDVDで言ってましたよ、「ブッシュは世界の警察のつもりになっている」と。まさに豚です。「Pigs」は3匹います。経済的・政治的・道徳的な権力を振り回す3支配層です、資本家ではありません。

ところで『アニマルズ』に関して資本主義とか社会主義とか、政治的な解釈を見かけるんですが、ロジャー・ウォーターズ自身は言ってないと思います。彼は「何もかも分かっているつもりで,他人に指図する権利を持っているつもりになっている人間」(『ピンク・フロイド全曲解説』アンディ・マベット著/バーン・コーポレーション発行)とだけ言っているので、ブッシュを当てはめようが教育委員会を当てはめようが、正しいはずです。「犬のような何かがいれば、羊と豚のような何かがいる。それが歴史の常である」てなところじゃないですかね。

でも、重要なのは「Pigs on the Wing」なんです。フロイドのCIみたいになっている飛ぶ豚とは何か? 評論家は資本家なんて言ってますが、今月もウォーターズは「Sheep」で飛ばしてましたよ。以下、私の解釈です。

いじめられっ子は毎日とぼとぼと通学し、空を眺めて救いの飛ぶ豚を待っています。しかしいじめっ子は飛ぶ豚が現れるとシッポを丸めて犬小屋に退散しました。さて、どんなバカも知っている飛ぶ豚とはなんでしょう。これがウォーターズの仕掛けたジグソーパズルでした。

それが解ければいじめがなくなるかもしれないので、私は考えました。そして見つけました。すべてのいじめられっ子がそれを獲得すれば、いじめはなくなります。

それはアイデンティティです。それがないからいじめられるのです。「Dogs」で“Who was...”が繰り返されますね。「そんな私は誰だ」──アイデンティティ・クライシスです。「Shine on You Crazy Diamond」の“画家かつ笛吹きかつ捕虜……どこにいるのか誰も知らない……勝者にして敗者……真実と妄想の探求者……”はアイデンティティ喪失の歌と言えます。

だから、飛ぶ豚はフロイドのCI=Corporate Identityとなり得ます。

いじめ解釈のウェブサイトの原稿はほぼ完成し(20余頁)、ウォーターズの承諾待ちです。しかし、替え歌とは言えJASRACに大金を支払わなければならないので、断念しかかっています(>_<)。著作権に触れない試作ページのリンクを貼っておきますね。
●映画評「存在しない男の物語『海の上のピアニスト』」
http://www.geocities.jp/izimefarm/answer7-legend1900.html
●雑談
http://www.geocities.jp/izimefarm/chat.html

Posted by: IzimeFarm at Mar 28, 2007 11:24:45 PM

IzimeFarmさん:

コメントありがとうございます。

Pigsはこの「Animals」の中で、いわゆる横暴な支配者を表すキャラクターに成っていて、ブッシュをはじめとする今のアメリカの姿に当てはまるような気がするんですね。

ちなみに、IzimeFarmさんは、この曲をいじめと結びつけてイメージされているとの事ですので、その点では若干僕と観点が異なりますが、なるほど「いじめ問題」も支配者(Pig)とその支配者に従って積極的に協力する者(Dog)、そして従順で無力な被支配者(Sheep)という図式の中で見ることが出来ますね。

ところで、このアルバム「Animals」のテーマは、ジョージ・オーウェルの著作「Animal Farm(動物農場)」(1945年)を引用しているというのが定説に成っています。

この作品は、当時のソビエトにおけるスターリンによる全体主義を“動物農場”という比喩を使って冷徹に批判したものですが、時代は変わっても、民主主義の御旗の下に、世界最強の軍事力をもってアメリカ的な価値観を他国に押し付ける今のアメリカにも、そのまま当てはまるのではないかと感じたわけです。

「Animal Farm」は「1984」(1949年)と共にオーウェルの代表作といってよいと思いますが、「1984」が“Big Brother”によって全てが監視される近未来を描いている点で非常に予言的で、まさに今の世界はオーウェルの予見したとおりに成っているわけで、このアルバムを久しぶりに聴いて、改めてオーウェルの凄さを再認識したという感じでしょうか。

ところで、ウォーターズのツアーの模様がYouTubeで視聴できること、教えてくれてありがとうございました。

早速チェックしてみます。

Posted by: a-key at Mar 25, 2007 7:10:39 PM

ウォーターズの「狂気」ツアーは上海とか香港まで来たのに、日本をスルーして南米へ行ってしまいましたね。
YouTubeでいくつかライブを見ました。「Sheep」もやっていて、ビックリ。
ところで、「Pigs」の歌詞が今日的だと書いておられましたね。とても興味あります。どの部分でしょうか。
実は私も「Pigs」がいじめの、教師がいじめ隠蔽したニュースにリンクさせていました。「都合悪いことは隠すブタ野郎」てな感じです。また「Sheep」もいじめに見て見ぬふりをする同級生の歌だと気づき、「Dogs」はいじめっ子そのものだと気づいたんです。それで完全にいじめ問題の替歌にしたら、すぐ完成しました。
HPを作りたいんですが、これを公開すると著作権違法ですよね? ピンク・フロイドにメールしたけれど、返事がこないんです。

IzimeFarmというのはその「いじめ農場」です(^_^;)。

※ここの書込欄、文字化けしますが、ちゃんと表示されるかなぁ。

Posted by: IzimeFarm at Mar 20, 2007 10:52:55 PM

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