【アメリカ 東京周辺にパトリオット・ミサイル配備】
Monday, October 30, 2006
北朝鮮のミサイル発射実験と核実験の実施をきっかけに、本格的なミサイル防衛システムが横田や横須賀など東京近郊の在日米軍基地に配備されることに成ったらしい。
■地対空ミサイル、米軍が首都圏配備へ(NIKKEI NET)
在日米軍がミサイル防衛(MD)の中核をなす地対空誘導弾パトリオット3ミサイル(PAC3)を首都圏の米軍基地に配備する検討を始めたことが28日、分かった。日本政府への非公式な連絡によると横田基地(東京都)や横須賀基地(神奈川県)が候補地。北朝鮮の7月の弾道ミサイル発射や今月の核実験を踏まえ、MD体制強化を急ぐ方針とみられる。
具体的な配備日程は判明していないが、早ければ来年にも迎撃体制が稼働する見込みだ。
この日経新聞の記事はCNNでも大きく取り上げられているが、「この配備によって東京近郊にある重要な米軍施設が守られる」と説明している。
「日本を守る」というよりも、「日本の中のアメリカを守る」という意識なんだろう。
■U.S. may put Patriots near Tokyo (CNN.COM)
Washington unofficially informed the Japanese government it is considering putting Patriot Advanced Capability 3 surface-to-air interceptor missiles around Yokota Air Base in Tokyo's western suburbs and around Yokosuka Naval Base, south of the capital, the Nihon Keizai newspaper reported without saying how it got the information.
The added defenses would cover critical U.S. military installations on the outskirts of Tokyo.
The move would be part of a previously announced U.S.-Japanese effort to deploy PAC-3 missile defense systems around the country as the two allies look for ways to counter what is seen as a growing threat from neighboring North Korea.
そういえば防衛庁長官もミサイル防衛システム導入の前倒しを明言していた。
■(10/25)防衛庁長官「ミサイル防衛導入、可能な限り前倒し」(NIKKEI NET)
「特にミサイル防衛(MD)については、最近の状況から2011年度までに仕上げるという計画で、07年度から配置していこうとPAC3、イージス艦に配備するSM3をできる限り前倒ししてやらなければならない」と表明。「発注しても(納入までには)時間がかかるから、07年度末までに配備する予定のPAC3などは、07年末までに配備できるよう可能な限り検討を行っていきたい」と語った。
MDの導入を急ぐ理由に関しては、「我々にとって一番気になるのは、非常に(着弾まで)短時間のミサイルで攻撃される場合。今の日本には残念ながら、これを迎撃するだけの力がない」と説明した
北朝鮮のお陰でこうした説明に異論を唱えるのは難しい状況になっているけれど、やっぱりアメリカと日本では、このパトリオット配備の目的や意味合いに違いがあるようだ。
ようするに主目的は米軍基地の防衛能力の強化であり、その費用を日本が負担する、という図式だから、これはいわゆる“思いやり予算”の一種と考えてよいのだろう。
ところでこのパトリオットについては、田中宇さんが面白い解説をしている。パトリオットの有効性はかなり怪しいものなのに、日本はそれを知りながら日米同盟堅持のための「潤滑油」として購入を決めたのではないかというのだ。
■パトリオットは詐欺かも (田中宇の国際ニュース解説)
軍のハイテク化の中でも、飛んできたミサイルを迎撃ミサイルで撃ち落とそうとする「ミサイル防衛計画」は、北朝鮮のミサイルの脅威に対応できると考える読者が多いだろう。日本は最近、巨額の金をかけてアメリカから迎撃ミサイル「パトリオット」を導入している。
だが、迎撃ミサイルが飛んできた北のミサイルを撃ち落とせる確率がどの程度なのか、多いに疑問がある。「パトリオット」は1991年の湾岸戦争で使われ、当初は100発100中のように報じられたが、実はほとんど迎撃できていなかったことが、戦争後に明らかになっている。(関連記事)
その後、米軍は大陸間弾道ミサイルを撃ち落とす迎撃実験を繰り返しているが、これまで数回の実験はすべて失敗で、今年9月初めに行われた最も最近の実験だけ「成功」と発表された。(関連記事)
従来の失敗を見ると、迎撃システムはまだ実戦使用には耐えない初期の実験段階でしかないことが分かる。実際のミサイルは、いつどこからどのくらいの重さのものが飛んでくるか分からないが、実験では、発射場所と発射日時とミサイルの重さや大きさをすべて事前に迎撃システムに入力し、それでも迎撃できない確率の方が高かった。(関連記事)
9月の実験が「成功」と発表されたのは、7月の北朝鮮のミサイル試射後、アメリカや日本で「迎撃ミサイルは北朝鮮のミサイルを撃ち落とせないのではないか」という懸念が広がったことへの対策であり、アメリカから日本に迎撃ミサイルをスムーズに売り込むためにも「成功」が宣伝される必要があったのではないかと勘ぐれる。
本当は迎撃ミサイルが使いものにならないのだとすれば、日本政府はアメリカに騙されているのか、と思う人もいるかもしれないが、もしかすると日本政府は、迎撃ミサイルが使いものにならないかもしれないと知りつつ、巨額の金をアメリカに払っているのかもしれない。巨額の迎撃ミサイル購入費は、日米関係の「潤滑油」としてうってつけである。
■U.S. may put Patriots near Tokyo (CNN.COM)
Washington unofficially informed the Japanese government it is considering putting Patriot Advanced Capability 3 surface-to-air interceptor missiles around Yokota Air Base in Tokyo's western suburbs and around Yokosuka Naval Base, south of the capital, the Nihon Keizai newspaper reported without saying how it got the information.
The added defenses would cover critical U.S. military installations on the outskirts of Tokyo.
The move would be part of a previously announced U.S.-Japanese effort to deploy PAC-3 missile defense systems around the country as the two allies look for ways to counter what is seen as a growing threat from neighboring North Korea.
そういえば防衛庁長官もミサイル防衛システム導入の前倒しを明言していた。
■(10/25)防衛庁長官「ミサイル防衛導入、可能な限り前倒し」(NIKKEI NET)
「特にミサイル防衛(MD)については、最近の状況から2011年度までに仕上げるという計画で、07年度から配置していこうとPAC3、イージス艦に配備するSM3をできる限り前倒ししてやらなければならない」と表明。「発注しても(納入までには)時間がかかるから、07年度末までに配備する予定のPAC3などは、07年末までに配備できるよう可能な限り検討を行っていきたい」と語った。
MDの導入を急ぐ理由に関しては、「我々にとって一番気になるのは、非常に(着弾まで)短時間のミサイルで攻撃される場合。今の日本には残念ながら、これを迎撃するだけの力がない」と説明した
北朝鮮のお陰でこうした説明に異論を唱えるのは難しい状況になっているけれど、やっぱりアメリカと日本では、このパトリオット配備の目的や意味合いに違いがあるようだ。
ようするに主目的は米軍基地の防衛能力の強化であり、その費用を日本が負担する、という図式だから、これはいわゆる“思いやり予算”の一種と考えてよいのだろう。
ところでこのパトリオットについては、田中宇さんが面白い解説をしている。パトリオットの有効性はかなり怪しいものなのに、日本はそれを知りながら日米同盟堅持のための「潤滑油」として購入を決めたのではないかというのだ。
■パトリオットは詐欺かも (田中宇の国際ニュース解説)
軍のハイテク化の中でも、飛んできたミサイルを迎撃ミサイルで撃ち落とそうとする「ミサイル防衛計画」は、北朝鮮のミサイルの脅威に対応できると考える読者が多いだろう。日本は最近、巨額の金をかけてアメリカから迎撃ミサイル「パトリオット」を導入している。
だが、迎撃ミサイルが飛んできた北のミサイルを撃ち落とせる確率がどの程度なのか、多いに疑問がある。「パトリオット」は1991年の湾岸戦争で使われ、当初は100発100中のように報じられたが、実はほとんど迎撃できていなかったことが、戦争後に明らかになっている。(関連記事)
その後、米軍は大陸間弾道ミサイルを撃ち落とす迎撃実験を繰り返しているが、これまで数回の実験はすべて失敗で、今年9月初めに行われた最も最近の実験だけ「成功」と発表された。(関連記事)
従来の失敗を見ると、迎撃システムはまだ実戦使用には耐えない初期の実験段階でしかないことが分かる。実際のミサイルは、いつどこからどのくらいの重さのものが飛んでくるか分からないが、実験では、発射場所と発射日時とミサイルの重さや大きさをすべて事前に迎撃システムに入力し、それでも迎撃できない確率の方が高かった。(関連記事)
9月の実験が「成功」と発表されたのは、7月の北朝鮮のミサイル試射後、アメリカや日本で「迎撃ミサイルは北朝鮮のミサイルを撃ち落とせないのではないか」という懸念が広がったことへの対策であり、アメリカから日本に迎撃ミサイルをスムーズに売り込むためにも「成功」が宣伝される必要があったのではないかと勘ぐれる。
本当は迎撃ミサイルが使いものにならないのだとすれば、日本政府はアメリカに騙されているのか、と思う人もいるかもしれないが、もしかすると日本政府は、迎撃ミサイルが使いものにならないかもしれないと知りつつ、巨額の金をアメリカに払っているのかもしれない。巨額の迎撃ミサイル購入費は、日米関係の「潤滑油」としてうってつけである。
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