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Monday, November 06, 2006

【アメリカ中間選挙の鍵を握る電子投票システム】

■不正が予測される米中間選挙(TANAKA NEWS

ちょうど先週のJAM THE WORLDの放送終了後にアメリカの電子投票システムの脆弱性についてスタッフと話をしたばかりだったが、タイミング良く数日前に「田中宇の国際ニュース解説」でもこのテーマを取り上げたコラムがリリースされた。非常にタイムリーかつ詳細な内容のレポートになっている。

 アメリカでは、2000年の大統領選挙で、旧式のパンチカード型の投票機械が、フロリダ州などで、判読困難な投票結果を生み出したことが一因で、開票時に大混乱が起きた。この教訓を受け、ブッシュ政権下では、投票機を新型の電子式(タッチスクリーン方式)に替える政策が、連邦予算の計上をともなって進められてきた。その結果、11月7日の中間選挙では、アメリカの有権者の8割が、電子式の投票機を使って投票を行うことになっている。

 問題は、この電子式投票機の中に、投票の集計結果を簡単に改竄して不正がやれてしまうものが多いことである。アメリカの電子式投票機の大手メーカーは3社あるが、最も台数が多いのは「ディーボルド社」の「アキュボート」(AccuVote)という製品で、全米の投票所の約4割が、この投票機を使っている。この製品名は「正確な(accurate)投票(vote)結果を出す機械」という意味でつけられたのだろう。だがこのマシンは、名前が示すものとは正反対の、不正な投票結果を出してしまうことで、アメリカの選挙専門家の間で有名になりつつある。

 たとえばニューヨークタイムスは9月24日の記事「Officials Wary of Electronic Voting Machines」で、ディーボルド投票機の不正疑惑を指摘している。知事が民主党の州では、電子式をやめて旧式に戻したりして不正対策をやっていることなどが紹介されている。(関連記事その1その2

 このほか、アメリカのABCテレビ、MSNBC、イギリスのフィナンシャルタイムス、ガーディアンなどのマスコミでも、ディーボルド投票機の不正疑惑問題が報じられた。(関連記事その1その2その3

 大手の映画専門ケーブルテレビのHBOは、ディーボルドの投票機の不正疑惑をテーマにしたドキュメンタリー映画「Hacking Democracy」を、ディーボルド社からの苦情をはねのけ、11月2日に放映した。(関連記事その1その2

 9月には、プリンストン大学の教授と学生が、ディーボルド投票機の実機を入手し、実際に不正ができるかどうかを試したところ、簡単に不正ができたことが論文として発表されている。(関連記事

この論文によると、ディーボルドの投票機アキュボートは、OSがウインドウズCE3.0で、CPUは旧式の日本のPDAにも多く使われていた日立のSH3プロセッサ(133Mhz)、マザーボードにはPCカードがついている。投票機は、通常は内部メモリから起動するが、独自の起動プログラムを書いて fboot.nb0 という名前のファイルとしてコンパクトフラッシュなどのメモリに保存し、それをPCカードに差し込んで起動すると、通常と異なる動きをさせることができる。

 論文では、不正な独自プログラムによって、各候補者の得票率をあらかじめ設定しておくことで、本当の投票結果とは関係なく、事前に設定した投票結果を選挙後に出力できることを立証している。この投票機はセキュリティが甘いので、不正なプログラムで起動していることは、コンピューターの専門家が疑問を持って詳しく調べない限り、有権者にも投票所の選挙管理委員会にも察知できない。投票機のPCカードスロットには施錠できるふたがついているが、そのカギは一般に市販されているロッカー用のカギと同じものだった。(関連記事

僕自身も2004年の3月に【アメリカの電子投票システムは大丈夫?】と、同じく12月にも【米大統領選挙 電子投票システムの改竄疑惑】と2回エントリーで取り上げているんだけど、この二つのエントリーの引用元に成っているHOT WIREDの記事(末尾のリストを参照のこと)を読むだけでも、充分にこの問題の根の深さが理解できるはずだ。

当時は、ブッシュ大統領の再選が掛かった大統領選挙でこの電子投票システムが不正に利用されたのではないかということで、各方面で議論が起きていたが、日本のマスメディアはこのHOT WIREDの記事を除いて全くといって良いほど報道しなかった。

実際に2004年11月の大統領選挙当日、CNNやMSNBCなどの選挙特番を観ていた僕は、当初ほとんどの局が出口調査の結果「多くの地域でケリー優勢」を発表していたのに、開票が始まると何故か逆にブッシュ優勢に反転し、奇妙な印象を持ったのを記憶している。

僕が再びこの問題に注目するようになったのは、10月の中旬からCNNで何度も放送されている「BROKEN GOVERNMENT」という中間選挙に合わせたシリーズ番組を観たのがきっかけだった。

この特番はブッシュ共和党の5年間を振り返って、「イラク戦争」、「機能しない議会」、「恐怖心を利用した政権運営」、「アブグレイブやグアンタナモで失墜したアメリカの正義」などなど、あらゆる角度からブッシュ政権を辛らつに論評する、かなり画期的な内容の番組なのだが、その中でもおそらく中間選挙そのものに最も影響を与えるだろうと思われるのが、この「電子投票システム問題」だ。(YouTube

今回の中間選挙では何と全体の80%近い投票が電子的に行われるというから恐ろしい。このCNNの特番でアンカーを務めるJACK CAFFERTYは、「歴史上最も偉大なアメリカの民主主義が崩壊の危機に晒されている。」とまで云っている。

これほど問題だらけだとされる電子投票システムが、各方面からの様々な指摘にも関わらず特に改善されるわけでもなく、粛々と使用される今回の中間選挙。

事前の予測では圧倒的に民主党優勢で、上下両院の勢力図が一変し、ブッシュ政権の求心力は確実に低下するといわれているけれど、果たしてどうなることやら・・・。

僕はこの電子投票システムがある限り、「何でもあり」ではないかと思っている。

 

■HotWiredに掲載された日本語版関連記事アーカイブ

「電子投票機の集計結果を操作するコードを作成」と告発(下)
「電子投票機の集計結果を操作するコードを作成」と告発(上)

大統領選の電子投票結果を疑問視する声が根強い中、フロリダ州選出の共和党下院議員の依頼を受けて、電子投票機の集計結果を操作できるコードを4年前に作成した、と告発するプログラマーが登場した。秘密裏に起動されると投票機の中を検索し、目標とする候補者の得票数が不利と分かると、記録されている総票数を操作する仕組みだったという。

フロリダ州のブッシュ票問題、さらに紛糾
フロリダ州の電子投票機に「ブッシュ票が多すぎる」との疑惑
米大統領選:電子投票機の取扱ミスで4500票以上が無効に
米大統領選:電子投票機のトラブル報告、相次ぐ(上)
米連邦地裁、フロリダ州電子投票に印刷記録の義務なしと判断
電子投票システムの舞台裏を究明する市民団体
米国防総省、国外在住者向け電子投票システムの導入を断念
米政府のインターネット投票実験に「待った」
カリフォルニアの大学生、オープンソースの電子投票システムを開発へ
オハイオ州、セキュリティー問題で電子投票システムの導入を延期
カリフォルニア州、電子投票装置に印刷機能を義務付けへ
電子投票システムに新たな不備:未認証のソフトウェアを使用
ソフトウェアだけでない、電子投票システムの問題点
カリフォルニア州知事選、問題の指摘された電子投票システムを変更せず
メリーランド州、電子投票システムのリスク評価報告書を公表
選挙結果の操作も可能? 電子投票システムの危ういセキュリティー
電子投票システムメーカーのセキュリティー管理に懸念
投票内容を印刷して正確性を期す電子投票装置
電子投票ソフトの欠陥めぐり、元従業員がソフト会社を提訴

November 6, 2006 in Media, Politics, Web/Tech | Permalink

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