【イランからイギリスへの贈り物】
Thursday, April 05, 2007
アメリカによるイラン攻撃の開始予定日として、事前にロシア軍情報筋からリークされていた4月6日を前にして、イランのアフマディネジャド大統領は15名の捕虜を解放し、イギリス軍兵士たちは無事帰途に着いた。
アフマディネジャド大統領は、「イギリスによる領海侵犯があった」という主張は崩していないけれど、捕虜の解放というカードを切ることで外交的な得点を上げた形になる。
ところで、Iイギリスはイラン側に対する外交交渉のなかで、「二度とこのようなこと(領海侵犯)は繰り返さないと明言していたというから、ある程度その事実を認めたのかもしれない。
15名のイギリス兵氏は全員領海侵犯を認めて謝罪しているけれど、今後は、本当にその事実があったのか、それともイラン側からの圧力でそうした発言をしたのか、帰国した兵士たちに対する調査に焦点が移る。
原油価格もこれでしばらく落ち着くのだろうか。まぁ何にしても、今回は戦争に成らなくて良かったけれど、イランの核開発疑惑を巡る駆け引きはこれからも続く。
■Ahmadinejad's final flourish (BBC.COM)
President Ahmadinejad announced the release of the 15 British naval personnel like a card player flinging down his hand to scoop the pool.
Iran had good cards and played them well.
It made its point about defending its borders, dominated international television with pictures of its prisoners and their "confessions" and, when it perhaps judged that it had got as much as it could expect to out of the confrontation, ended it with a flourish.
Iran will project this as a victory (the medals given publicly to the officers who led the operation was an immediate example) against a country still viewed with suspicion in Iran because of its past interventions.
It also put out an indirect warning that any attack on its nuclear plants would be met with vigour.
■British sailors on their way home (BBC.COM)
The 15 Royal Navy crew members held captive by Iran are flying home after being freed by President Mahmoud Ahmadinejad as a "gift" to the UK.
They left Tehran Airport at about 0800 local time (0530 BST) on a British Airways flight bound for Heathrow.
Before leaving, several of the crew spoke on Iranian television to express thanks for their release.
Prime Minister Tony Blair said the homecoming would be "a profound relief" to the personnel and their families.
'Apparent intrusion'
Before leaving, one of the 15, Lt Felix Carman, told Iranian television: "To the Iranian people, I can understand why you were insulted by our apparent intrusion into your waters.
The only woman in the group, Leading Seaman Faye Turney, said: "Apologies for our actions, but many thanks for having it in your hearts to let us go free."
Mr Ahmadinejad said no concessions had been made by the British government to secure the releases, but that Britain had pledged "that the incident would not be repeated".
ブレアは米のイラン空爆を阻止した?
イギリス側は、兵士を取り戻せて安堵しているだろうが、イラン側には、英兵士の早期釈放にどんなメリットがあったのか。イランのアハマディネジャド大統領は、経済政策が失敗して国民から不満を持たれているが、核問題などで欧米に対して強硬姿勢を採ってイラン国内のナショナリズムを煽り、それを自らに対する人気保持の源泉としてきた。捕虜問題でイギリスと対立が長引くほど、アハマディネジャドにとっては好都合だった。
イギリスとの交渉でイラン側は、イラク駐留米軍に1月から拘束され続けているイランの外交官5人の解放を、交換条件に出したと考えられるが、アメリカが釈放したのは、5人のうち1人だけだった。(詳細は報じられていないが、ブレア首相がブッシュ大統領に拘束中のイラン外交官の釈放を頼み、ブッシュは5人中1人だけの釈放に応じたのだろう)
私の推測は、米軍は英兵捕虜問題を理由に4月の早い段階でイランを攻撃することを計画しており、イギリス側は「米軍に攻撃されたくなかったら、早く英軍兵士を返した方が良い」とイラン側を説得し、兵士の返還と、アメリカによるイラン空爆阻止の両方を達成したのではないかということだ。英兵が返還されれば、米は空爆の理由を失う。すでに述べたように、米軍がイランを攻撃して戦争になると米英の中東覇権を失墜させるので、ブレアは攻撃に反対のはずである。
一触即発の状況を自らの人気保持につなげてきたイランのアハマディネジャドも、ぎりぎり瀬戸際の状況は望んでも、戦争になって国を破壊されることは望んでいないはずである。
開戦の可能性は減った?
米イラン戦争の開戦事由になりそうだった英軍捕虜事件は解決したが、これによって米イラン戦争はもう起きなくなったのだろうか。
今後、米イラン戦争がなかったとしても、もはやアメリカが中東の覇権を失わないですむことはない。米軍の惨敗のイラク撤退は時間の問題だ。キッシンジャー元国務長官は先日東京に来たときに「アメリカはもう、イラク全体の統治を復活することはできない。もはやイラクで勝つことはできない」と述べた。アメリカの外交戦略の黒幕的シンクタンク「外交問題評議会」は、すでに昨秋「アメリカ中東支配の終わり」を宣言している。(関連記事その1、その2)
日本は、親日国だったイランとの経済関係を切り続け、同時にアメリカからは従軍慰安婦問題で非難され、次には捕鯨問題でも非難され始めている。日本が採っている対米従属戦略は、アメリカの自滅的覇権衰退とともに、転換が必要になっている。だがマスコミや政府内には、そのことに気づいている人自体、ほとんどいない。(関連記事)
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